天使になった大統領  上巻1、2 坂の上零

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2622p

「自分がこれだけは失うまいとしがみついている物事や考え方をあえて捨てて、新しい環境を作ってみるんです。楽しみを作るんですよ」

2632p

「さっきの『発想の転換』ですが、私はあなたに対して行ったのと同時に、自分自身に対して言ったんですよ」

2642p
「人生には、目に見えない大きなブラックホールがある。絶望と惰性と無感動と言うなのね。吸い込まれたら最後、抜け出せない。だが、悲劇なのは、真面目で、聡明な人ほど、そこに吸い寄せられてしまうんですよ。いやはや、全く理不尽なもんです。だから言うんですがね、楽しみを生み出す発想の転換は、時に重要なんだ。
いや私も今、その必要性を肌身で感じていますから」

2979p

そんな毎日の中でも、ジェニファーは時々思い出したように、リチャードの言葉を反芻しては、自分自身を納得させることがあった。

「恋愛は一時の火遊び。愛だ恋だと騒いでも、情熱は消えてしまう。

花火のようなもので、過ぎ去った後には、何も残らないんだ。ただ思い出の記録として胸の中に留まるに過ぎない。それをお粗末な文学者どもはロマンスと呼ぶ。

だがね、どう呼ぼうと恋などと言うあてにならん感情は、いずれは過ぎ去る虚しいものだ。しかし、家庭が違う」とリチャードは言う。

「たとえおままごとであっても、家庭は継続していくんだ。そうあるべきだし、そうでなければならないものなんだよ。つまり、家系の継続だ。それは社会を作り、伝統を作っていく。そして継続していく世界しか最後まで残らないんだ。私の真実は、継続の中にしか見出せない。家庭は国家の細胞であり、秩序なんだ。秩序がなければ存在もありえないんだよ」それはそれで正解だとジェニファーは思う。

彼女はまだ死なせてもらえなかった。彼女の子の前の最後の祈りに、神は答えられたのか。ジェニファーの心に響く声のような感覚があった。

…人生には意味も意義もあります。

ただ漠然と、偶然に生命の存在があるのでは無いのです。

存在には理由があり、人間には生きる意味があります。

だから、あなたはまだ死にません。私があなたの息を引き取らないからです。

あなたが望んだように、これからあなたは「生きることの意味」を知るのでしょう。

私は全宇宙天地万物の全てを想像した源。私は有りて在るもの。

私はあなた以上にあなたを知っています。

あなたの悲しみの深さも、苦しみの大きさも、全てを私は知っています。

強くあれ。雄々しくあれ。

人々があなたを見捨てても、私があなたを見捨てないのだから!

さぁ、行きなさい。そしてその目で見なさい。そして知るのですあなたが求めた生きると言う事の意味を人間が存在する理由をーー。

4139p

時間だけはたっぷりあったジェニファーは孤独を持て余した。

寂しさをごまかすために、人生の教訓的な本をいろいろ読んでみた。

人生に目的を持って明るく生きようだの、プラス思考の驚異だの成功のための「7つの習慣」だのといろいろ読んだ。

中略

苦しみに1人悶えながら、すがる思いで読んだ「自分を思い通りに動かす」などの、己の弱さと思うのさを助けてくれそうなタイトルのついた本では、本質的に、人間を救うことはできない。

言うまでもなく、それらはどれも正論だ。

正論は常に正しい。プラス思考で人生が楽しいほうがいいに決まっている。

それで人間が生まれ変わったように思えることもあるだろう。

しかし、それは表面上の浅い次元での話だ。所詮は気休めでしかない。

なぜなら、正論では、根本的な問題の解決ができないからだ。

人間の深層心理の奥深くには、自分自身ではどうしようもできない世界が息づいている。

人間の心の中に繰り広げられている感情の宇宙は、ただの世論や綺麗事、プラス思考だけでは、到底理解し得るものでもなければ、埋められもしない。もっともっと根が深いものなのだ。

人生には(プラス思考だけではどうしようもできないブラックホールがある。

それは本当の自分自身と向き合って初めて、己自身を越えていくことができるようになるのかもしれない。それに、本当の悲しみと苦しみを味わった人間にしか、他人を救うことなどできない。そして、それは正論の枠と限界を超越している。

上2巻 643p

「ジル、それは正論だ。そして、それは教科書の中だけの世界だ。政治に正論などない。
世界史上、今までもあったためしがないし、これからもない。
人間が存在する限りそういう政治は存在するが、永遠に政治に正義にはないのだ。
表と裏の顔を使い分けることもできなければ、政治家失格だ。政治家に正義感は禁物なことぐらい、判るよな?」

5262p

こんな意識の低い連中のために、なんで俺が一生懸命頑張ってやらねばならないんだ。連中は自分の金儲けと悦楽しか欲しがらないのに。

ニコルソンが感じていた深い挫折感と憤り、そして空虚と言う病気は、気がつくと彼自身の中で深い絶望へと変わっていった。

5290p

人間のやることを、考える事はこの程度か。人間のする里美にくさにはほとほとうんざりする。人間など消え去れば良い。

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