我が人生の記,渡辺喜太郎著、感想、レビュー

麻布自動車、麻布建物のオーナー渡辺喜太郎氏の自叙伝です。

とても読みごたえがあります。

p093

あまり大きな声で言えないが、時にこうしたハッタリが有効なことも, 人間社会の一側面ではある.

TPOをわきまえた上で,一生のうちに一回か二回は, こういうハッタリを使うのも良いかもしれない.

ただし,何度も使ってしまうと 最も重要なことである「信頼」を損ねてしまう。
ハッタリは所詮ハッタリだから,大事な場面で使うことも避けた方が良いだろう.

人生はトータルで「公平である」ことを忘れてはいけない

p312

「人間、生まれた時から死ぬまでの間、お天道様はみんなを公平に見ていてくれている」-私はこうも考える

人生は,同じスタート地点では始まらない.

「オギャー」と生を享けた時、馬場カードを引いてしまった人,ダイヤやスペードのエースを引いた人 、、、裕福な生れを指す「銀のスプーンを咥えて生まれた」 という言葉があるように、 人は生まれたときから 格差がある.

最近では,生まれた環境によって人生が決まるという意味の「親ガチャ」なる言葉が流行語になっているらしい

けれども人生をトータルで見た場合, 誰にでも公平に運やチャンスは巡ってくるものだと私は思う.

生まれた時に良いカードを引けば,確かに初めのうちは何かと有利だろう

でも人生で一度もババのカードを引かない人などいない。

どんなに恵まれた環境の人でも生きている間必ず一度はババを引く。

世の中はそのように出来ている。

それならば、むしろ若いうちに貧乏くじを引いたほうが、長い目で見ればプラスになることだってある.

私自身がそうだったからだ 私は11歳のときにババを引いた

何度も言うけれど東京大空襲により家族を失ったことだ.

そのため丁稚奉公に出た. そこで一生懸命働けば主人や偉い人に可愛がられることを学んだ.

(仕事をこういう風に片付けて遊びに出れば主人も気持ちよく送り出してくれるんだな) という要領もつかんだ.

さらに帳簿や手形など,商売の基本も覚えた.

人の話を聞いたり,教わったりする習慣も身についた. 掃除もできるし田んぼや畑の手入れもできるし,子供の御守りだってできる。

私は十代の後半にして、営業も経理も雑用も、すべて一人でこなせるようになったのである.

そして私は,そうした商売のノウハウを十二分に生かし,自ら会社を立ち上げた。

経営者になってからも,丁稚奉公時代に作った土台の役に立った.

というより,扱う金額や範囲が拡大しただけで,すべては丁稚奉公時代の延長だったと言っていい.

小学生の身でババを引き、丁稚奉公に出たことは、今振り返ればまたとない「チャンス」であった。

商売の基本をマスターできるという好機である。

そして私は、その絶好のチャンスを掴みとり、事業家として成功することが出来たのである。

つまり、チャンスはどこにでもあるのだ。

無いように見えても、実はそこいらじゅうに転がっている。

それがチャンスだと気づかないだけで、お天道様はみんなに対して、公平に幸運の機会を与えてくれているのである。

そのチャンスをものにできるかできないかが、運命の分かれ道になってくる。

「親ガチャ」を持ち出し「格差」を投げている人は、チャンスを見逃した人や、見つけようともしていない人だ.

それではあまりにももったいない.

嘆く前に、まずは好機を探してみるべきだ。

では,なぜ私は運やチャンスをつかむことができたのか.

ふてくされず,卑屈にならず,常に前向きに働いてきたからである.

(中略)

私は丁稚奉公時代,汚れ仕事や人の嫌がる仕事を率先してやっていた.

チャンスを掴もう,などと考えていたわけではない.

(奉公先の主人に気に入られたい)

(ここで大事にされたい)と思っただけだ。

(中略)

(どんな仕事も嫌がらずに引き受けよう、 引き受けたら真面目にやろう)

と思い立ち、その通りに実践した。

新しい仕事が出てくれば、いち早く手を挙げ引き受けた。

「職業に貴賎はない」というけれど、私は

「仕事にも貴賤はない」と思う。

(中略)

雑用をバカにせず、あらゆる仕事を本気でやった.

そして覚えた.

その結果,ビジネスの基本を体得することができた.

しかも,どんな仕事も厭わなかったことで、目上の人や先輩方に重宝され、目をかけられた。

それらがすべて合わさって、私は飛躍することが出来たのである。

人生をトータルで見てみれば,お天道様は誰にでも公平にチャンスをくれる.

必ずくれる.

それをどうつかみ取るかが勝負だ.

ふて腐れていてはダメ.

どんな仕事であろうと真剣に前向きに取り組もう.

それがチャンスをつかむことだ.

たった一度のかけがえのない人生をふて腐れて生きるなんてもったいない.

常に前を向きチャンスを見つけよう.

それはよく見ればあちこちに転がっているものなのである

決して人を裏切ってはならない

「決して人を裏切ってはならない」-私はこれも大事だと思う。

特に経営者にとって大事だと思う。

(中略)

約束を守り,守れそうにないときは事前に伝える.

埋め合わせもする.

この簡単なことが実に重要なのである.

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